商店街紹介

域内外の人々に愛され続ける商店街を、VUCAの時代に対応する術とは

上野文具店から見た東部馬車道通り商店街の眺め

新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受け、地域経済はかつてないほどに大きな打撃を受けている。都心に比べ、少子高齢化の進行も早いため、新しい生活様式への対応をしたくとも、リーダーシップ を発揮する次世代の若手がいないという問題が発生している。そんな中、栃木県宇都宮市において、市民に愛され続ける商店街づくりをコンセプトに、第一線で活躍する女性経営者がいる。東武馬車道通り商店街振興組合理事長上野氏である。彼女は、本業として、上野文具店の経営にも携わりながら、まちづくりに取り組んできた。古くからの伝統・文化を守りながらも、時代の変化に合わせて柔軟に事業運営をしてきた彼女に、これからの商店街のあり方についてお伺いした。

東部馬車道通り商店街の由来と、守り抜いてきたこだわり

東武馬車道通りに添えられた花壇の花

― はじめに、東武馬車道通り商店街の成り立ちをお聞かせください。

上野:かつては「東武一番通り」という名前だったのですが、東武宇都宮駅にあった倉庫から那須烏山方面に馬車で荷物を運んでいたという歴史から、私が 理事長に就任した後、「東武馬車道通り」という名前に変わりました。昔はこの商店街にもアーケードのように屋根が取り付けられていたのですが、今は屋根も外して、宇都宮オリオン通りと東武百貨店を繋ぐ開放的な通りになっています。他の商店街と比べると距離は短いですが、そこに濃縮された「歴史」と、今でもその歴史を継承し守って行きた「風情」を感じていただけるよう景観の維持に努めています。

― 確かに、趣のある商店街だと感じました。風情を守るため、こだわっていらっしゃるポイントについて教えていただけますか?

上野:ありがとうございます。私の趣味がガーデニングだったものですから、理事長に就任後はまず商店街の花壇を整備しました。さらに、手作りのハンギングバスケットを設置したり、冬になるとイルミネーションを点灯したり、商店街を通る方の五感に訴えかけられるような取り組みを積極的に行っています。私が理事長に就任した際、商店街の理事が7名中4名女性になったということもあり、商店街を通る方に季節感を感じてもらいたい、少しでも楽しいと思ってもらいたいという気持ちは比較的大きく、これからもこの取り組みは維持していきたいと思っていますね。その結果、宇都宮市の「まちなみ景観賞」をいただいたこともり、ありがたいことに地元の方々からもご好評いただいています。

これからもずっと愛され続ける商店街へ

上野文具店の商品

― 時代とともに商店街も移り変わってきたとのことですが、現在の商店街の役割や特徴などをお聞かせください。

上野:昔は理事の奥様方もそれぞれが個人商店を持っていたのですが、時代の移り変わりと共に皆さんやめてしまって、新しいことを始めるのもなかなか難しくなってしまいました。今はこの商店街を通る方のために状態を綺麗に保ち、「持続的に発展できる商店街を作る」ということをモットーに私たちは活動しています。通りのお店も随分変わりましたが、現在は飲食店が多いですね。宮祭りの際は、大通りから一本入ったところにあるこの商店街が、皆様が一休みする場所としての役割を果たしています。

― 「持続的に発展できる商店街を作る」ために、どのようなことに取り組まれているのでしょうか。

上野:栃木駅から東武宇都宮駅までの普通運賃が無料になる東武宇都宮線フリー乗車DAYというものが去年と一昨年に実施されたのですが、その時は東武百貨店の前を通行止めにし、道路にテーブルを並べてビアホールを作りました。東武百貨店さんがこの商店街復興組合の組合員になってくださっているので、東武のイベントと連携して一緒に盛り上げることができるのはこの商店街の一つの強みでもあるかなと思っています。

― 「持続的」という切り口でいうと、上野理事長の本業であられる上野文具様はどれくらい、お店を運営されてきたのでしょうか。

上野: 弊社は、130年前に創業し、初めは質屋をやっておりました。その後、今から約50年前に上野文具店となり、今の社長が4代目、文具店になってからは3代目になります。外商部があった頃は学校や企業からの発注も承っていたのですが、外商部がなくなった今では小売一本でやっていますね。都内だとネット販売や、ショッピングセンターに入っている大手の文具店を利用する人が多いかと思いますが、地方だと路面店も一定の需要があるのかもしれません。長くやっているので、小学生の頃から通っているというお客様もいらっしゃったりして、地元の方々に愛されて今があるなと思っています。

― 地元の方々に愛され信頼される文具店、とても素敵です。建物も5階建でとても立派だと思うのですが、文具店としてだけでなく、他の用途に使う機会もあるのでしょうか?

上野:現在1階から4階は商品を置いていますが、5階では書道教室や日本画教室、絵手紙教室などを行っています。お客様は中高年の女性が多いですが、書き初めの時期には小学生も参加されたりしています。昔からあるこの文具店は待ち合わせ場所として指定されることも多く、地元に根差しているからこそ、文具を売るだけでなく、地元の方々が交流できる場としても活用していきたいですね。今後は商品を置くスペースを縮小しながら、その分ネット販売を行ったり、地元のコミュニティのための場所貸しなども考えています。

次世代と共に創る、これからの商店街

東武馬車道通りの旗

― 東武馬車道通り商店街復興組合の理事長を長く務められている上野様だからこそ感じる、商店街の課題はありますか?

上野:東武馬車道通り商店街復興組合の理事のメンバーもそれぞれに本業がありますので、なかなか商店街のことに時間を割いたり、新しいことを始めたりするのが難しい状況です。ただ、皆さん興味がないわけではないので、新しい提案をして商店街を引っ張って行ってくれるような若い方がいてくださるとありがたいなと思います。時代の移り変わりも激しく、新型コロナウイルス感染症拡大の影響で例年できることが今年はできないなど、課題はいろいろありますが、私たちができることをやり続けながら、新しいことや若い方のアイデアも取り込んでいきたいです。現在行われている取り組みとしては、宇都宮市が飲食店に対して、特別に外で営業できるための呼びかけをしています。馬車道通りはオリオン通りのように屋根がないので、そこまでこの取り組みに参加できていないのですが、実際に外に席を作って営業しているお店もあります。こんな時期ですけど少しでも商店街を盛り上げようと、テイクアウトのメニューを販売しているお店もあります。お互いに気を遣いながら、そして協力しながらこの状況を乗り越えていきたいですね。

― 最後に、まだまだコロナ禍ではありますが、今後の商店街の展望をお聞かせください。

上野:こういったご時世ですので、商店街としてもなかなかやりたいことができなかったり、市のイベントが中止になってしまったり、悲しいことも多いです。しかしこんなご時世だからこそ、私共、東武馬車道通り商店街復興組合が中心となって踏ん張る必要があるのではないかと思っています。小さなことではありますが、これからも常に花を絶やさず通りを華やかにして、冬はイルミネーションで明かりを灯し、この商店街を通るお客様の心が少しでも晴れやかになってくれれば嬉しいです。長年私たちが取り組んできたことの中で、維持すべきことは続けながら、是非次の世代の方の知恵やパワーをお借りして、これからもこの商店街を絶やさず守っていきたいです。