商店街紹介

市民と共に創る地方都市の未来 宇都宮オリオン通り商店街振興組合

宇都宮オリオン通り商店街振興組合長島さん、小林さんとえにさむ代表の本間

近年、都心に人口が一極集中し、地方都市における経済圏が縮小傾向にある。そんな中、新型コロナウイルス感染症が拡大し、地域経済への打撃はこれまでに類を見ないほどに大きくなってきている。しかし、地方都市の第一線で活動する商店街は、そこに一喜一憂せず日々奮闘している。その中でも代表格が、宇都宮オリオン通り商店街振興組合の理事長長島氏、そして同じくマネージャーの小林氏だ。当インタビューでは、お二方に、過去の商店街の成り立ちから、これまでの変遷、そして現在直面している課題と今後の挑戦についてお伺いした。

宇都宮オリオン通り商店街の変遷

時代の遷移の中での商店街の取り組みについて話す小林さん

― はじめに、オリオン通りの成り立ちについてお伺いしたいのですが、そもそもオリオン通りはいつから始まったのでしょうか?

長島:1931年に東武鉄道新栃木―宇都宮間の開通により、新市街地が形成されました。オリオン通りの発足は1948年で、一条町・江野町・曲師町の3町内を貫く通りであることから、オリオン座のベルトの部分に当たる3つ星に見立てて、オリオン通りと名付けられました。

長島:1962年には私共宇都宮オリオン通り商店街振興組合ができ、最初のアーケードが生まれました。ちなみに、現在のアーケードは1990年に改修工事を行ったものです。当時は小売店が繁盛していて、百貨店も7つほどありましたが今はほとんどなくなってしまいました。現在は東武百貨店様にも商店街振興組合に加入していただきながら、市内に賑わいを生むという共通の目的のもと共存・共栄できるよう日々試行錯誤しています。

― 時代の移り変わりによって百貨店や小売店は減少しているとのことですが、新たな賑わいを生むために現在商店街としては、どのようなことに取り組まれているのでしょうか?

小林:ACぷらざを作ったことは、まさに賑わいを生むための一つの手段でした。街中で市民にアンケートにご協力いただいたところ、オリオン通りには休む場所がないという声が非常に多かったのです。それならばギャラリーとカフェを作って市民が休める場所をご用意しようと考え、文星芸術大学に在学されていた地元の学生の皆様と一緒にここを立ち上げました。市民のニーズに応えるということが商店街の役割だと思っています。

故くから変わらぬ、商店街の魅力とは

商店街の魅力について話す小林さん

― 市民のニーズに応える商店街、素敵ですね。ACぷらざではどのようなことに取り組まれているのでしょうか。

小林:例年夏になると、栃木県の伝統工芸師の作品を使ってお化け屋敷を開催しています。かつては、商店街を中心にして、世代を超え触れ合い、交流することが当たり前でした。しかし、最近は、親子の間ですらも、触れ合う機会が少なくなってきていることに対して非常に寂しいなという思いから、発案し、実行してきた企画です。今年の夏は時節柄なかなか子供達が外に出て集まることも難しいですけれども、昔ながら大切にしてきた、地域の子供と大人の触れ合いの機会ももっと増やしていければいいなと思っています。

― 確かに、昔は日常的であった子供と大人の何気ない交流が今では減ってきていますよね。

小林:昔は子供が地元の八百屋に集まって、品物にできない果物をもらうことや、親でなくても地元の大人たちが子供を見守ることがごく当たり前だったのです。今でも、商店街全体が一体となって、地元の小学5〜6年生に対する職業体験を実施していますが、子供達を大人たちが、見守るという文化は少しずつ薄れて行っているように感じます。時代の変化に伴い、商店街自体変革をしていかなければいけないということも重々承知しておりますが、一方で、故くから大切にしてきたこのまちの歴史や文化を見直し、伝承していくことが、私たちの世代の使命であると強く感じています。

賑わいは、商店街「だけ」では創出できない

商店街の今後の挑戦について話す小林さん

― 今後さらに商店街を盛り上げていくための挑戦について教えてください?

小林:例えば、というアイデアになりますが、この地域には工業団地が多くありますので、商店街として、製造業者とうまく連携して行きたいと考えております。お菓子工場の新作発表会をACぷらざで行うなど、とにかく製造業者に関わらず、商店街の枠を超えて地元の企業と連携することで、より一層地元と商店街の繋がりを強くしていきたいという思いがあります。

― 商店街の枠を超えて地元全体で連携していけたら、もっと市民と商店街の繋がりも強くなりそうですね。

小林:そうですね。企業だけでなく、宇都宮二荒山神社も地元と強いつながりがあります。宇都宮二荒山神社の起源は、第10代崇神天皇の御代、紀元前148年まで遡ります。今でも月例祭は地元市民が一丸となって行なっています。こういった神社との関係をもう一度見直し、地域や商店街を巻き込んで何かできないかと考えています。いずれにせよ、大切なのは商店街だけではなく、様々な方々と連携しながら、まちづくりに取り組んでいくということです。地域内のみならず、地域外の皆さん共うまく連携していくたいと考えております。

ポストコロナ禍における、商店街活性に向けたビジョン

オリオンACぷらざの前で長島さん、小林さん、本間

― 新型コロナウイルス感染症の影響もあり、ここ数ヶ月は色々と難しい時期ではありましたが、ここからまた商店街として地元を盛り上げていくためにどういった取り組みをお考えですか?

長島:そうですね。希望の光としては、一つオリオンスクエア(宇都宮オリオン市民広場)が9月末にオープンすることです。今すぐはまだ難しいかもしれませんが、これをきっかけに商店街として賑わいを取り戻していく策を考えていこうと思っています。東京だとイベント会場を使うのもなかなか高いと思いますが、オリオンスクエアは、比較的安価で利用可能ですので、賑わいの起点となる若手の皆さんであっても、気軽にイベントを行えるのではないかと思っています。オリオンスクエアを利活用して、新しい企画を実現して行きたいと考えています。

― オリオンスクエアを拝見しましたが、かなり立派で驚きました。ちなみに今後どのような企画を実施されるご予定ですか?

小林:これまで、文星芸術大学の漫画部の学生と一緒に、「あしたのジョー」などの作品で知られる漫画家「ちばてつや」さんをお招きして、ACぷらざの1階でイベントを行ったこともあります。生で漫画を描いてくださって、じゃんけん大会で勝った方にプレゼントしたり、かなり盛り上がりました。漫画やアニメが好きな方は宇都宮に限らず多くいらっしゃるので、そういったイベントを開催したら市外からも多くの人が足を運んでくださるのではないかと考えています。このように、若手の皆さんとの連携も一つ重要な鍵となってくると思います。

― 東京にも漫画やアニメが好きな方は多いので、そういったイベントが開催されれば市外からも足を運ぶ人は多いと思います。若手との連携が肝ということですが、最後に、そんな若手に期待することについて教えてください。

小林:現状、我々の世代が行っている地域活性化に向けた研究発表会等を見ていると、どうしても、これまでと同じような考え方が多く見られます。しかし、若い方は柔軟な発想で、新しい企画・アイデアを次々に生み出して行きます。どちらが良い悪いではないのですが、我々の世代が培ってきた経験や知識と、次世代の皆様の発想力を掛け算して、共にまちづくり、商店街の活性化に取り組んでいきたいです。