学会紹介

環境問題・災害から人々の安全な生活を守るため、遠隔測定技術の発展を目指す 一般社団法人日本リモートセンシング学会

リモートセンシングという技術は様々な場面で活用されており、私たちの生活と密接に関わっている。しかし、「リモートセンシング」という言葉の意味を明確に理解できる人は少ないだろう。リモートセンシングとは遠隔測定を意味し、雨雲レーダーや人工衛星など、地球全体の観測等に必要不可欠な技術である。その技術の発展・普及を目指す団体の一つに、一般社団法人 日本リモートセンシング学会がある。今回は河本氏に、技術の活用方法や学会の今後の展望について伺った。

雨雲レーダーから地図作成まで、幅広く応用できるリモートセンシング技術

― 最初に日本リモートセンシング学会がどのような学会なのかお聞かせ下さい。

河本氏:はい、まずリモートセンシングという言葉の意味についてご説明させていただきます。簡潔に言うとリモートセンシングとは、遠隔測定のことです。あらゆる物質は、光などの電磁波を受けると、その電磁波を吸収または反射するという性質や、物質が熱を持ったときは、電磁波を放射するという性質をもっています。リモートセンシングは、物質のこれらの性質を利用して遠距離にある物質が何かを特定し、そして観測する方法を指します。我々日本リモートセンシング学会は、このリモートセンシングに関する研究、提携を図り、学問および技術の発展、普及に寄与することを目的とする学会です。

― ありがとうございます。リモートセンシング技術は具体的にどのような場面で活用されているかお伺いしてもよろしいでしょうか。

河本氏:分かりやすい例ですと、人工衛星が挙げられると思います。Google Earthで見られる画像にも、リモートセンシングの技術が使われています。技術自体はあまり知られていないかもしれませんが、漁業や林業、他には雨雲レーダーや地図作成などにも幅広く用いられています。

幅広い分野で、技術の社会実装を

― 学会の役割の一つに、研究・技術を社会に還元することが挙げられると思います。社会実装の観点でお話をお伺いしてもよろしいでしょうか。

河本氏:世間の皆様が、リモートセンシング技術を用いて得られた情報に触れる機会が多いのは、やはり台風、豪雨、洪水、などのリアルタイムデータを調べる場面だと思います。当学会の中には、台風、雨のニュースの解説を出している会員もいます。豪雨災害が 多い日本では、瞬時に量や速さを測定し一般の方々に共有できるということは社会にとって非常に有用なのだと感じています。

活動を通して見出した、他分野との連携による社会への還元方法

― 非常に幅広く応用できる技術なのですね。所属されている会員様も様々な分野から集まっているのでしょうか?

河本氏:はい、学術界の人もいますし、産業界の人もいます。大学生、企業に勤めている方、研究者など、会員数は合計で1.000人以上はいます。分野に関しては、会員の勤め先の企業の業種・業界は幅広いですね。中でも測量関係、コンサルティング、建築系の企業の方が多いです。あとは、メーカーに勤めている方もいますね。

―外部では他分野との、産学連携または、学会との連携もされているのでしょうか。

河本氏:はい、他分野の組織との連携もしています。学会との連携に関しては、地球惑星科学連合や横断型基幹科学技術研究団体連合、韓国リモートセンシング学会、中華民国航空測量及遥感探測学会(台湾写真測量リモートセンシング学会)と協定を結び、学術交流をしています。産学官の「官」の部分では、内閣府防災担当が主催する「ぼうさいこくたい」にてセッションをする機会をいただきました。また、2009年には内閣官房宇宙開発戦略本部に対し、衛星データの実務利用についてなどを提言しました。「産」の部分に関しましては、戦略的イノベーション創造プログラム(国家レジリエンス(防災・減災)の強化)において、学会として連携してシンポジウムを開催しています。ベンチャー企業との実証実験や商品開発の取り組みなどについては、これから調査も進めたいと思っています。

環境問題、災害から人々の安全な生活を守ることを目指して

― 最後に、今後の日本リモートセンシング学会の今後の展開についてお伺いしてもよいでしょうか。

河本氏:地球温暖化をはじめとして、気候変動や環境問題の分野で社会に資することに重きが置かれると考えています。リモートセンシング技術は、気候災害の予測はもちろんのこと、地表面や森林などの広範囲且つ永続的なモニタリングを可能にします。そういったものは長期的に観察を続けると、一定期間の変動がわかります。来る地球環境の変化や自然災害に備えるための情報を皆様に届けることで、人々の安全な生活を守りたいと思っています。



<学会概要>
名称:一般社団法人 日本リモートセンシング学会
設立:1981年
HP :https://www.rssj.or.jp/
Youtube:なし
SNS:なし
設立趣旨:リモートセンシングに関する研究の連絡、提携を図り、学問および技術の発展、普及に寄与することを目的として1981年に設立されました。学会発足後から、学会誌の発行、各種研究会や講演会を開催して学問の普及に努め、会員相互の親睦・連絡を図っています。