学会紹介

アジア文化への純粋な探求心をもち続け、世代を超えた交流を目指す アジア文化造形学会

趣味や道楽を楽しむだけにとどまらず、より専門的な視点を持ちながら仲間たちと交流して極めることにより、自身の趣味が社会貢献への第一歩となりうるのである。学びを社会へ還元するための環境を具現化した学会の一つに、アジア文化造形学会がある。最初は民芸品を集めるところから始まった学会であるが、今ではその探求活動の範囲をより広域へと広げている。当インタビューでは、会長の山本悦夫氏と事務局長の水野通雄氏に、活動の背景にある思想や今後の展望についてお伺いした。

人間の本質である「こころ」と「かたち」を追求する

―まずアジア文化造形学会の概要についてお教えください。

山本氏:アジア文化造形学会は「アジアの人々の暮らしに関わる“こころ”と“かたち”の本質を究め、アジア文化の国内外会員相互の交流を図る」ことを目的に、1997年に金子量重氏によって設立されました。私たちは「アジア」を「ヨーロッパではない全ユーラシア大陸」と定義していますが、そうなると学会として相当な領域をカバーしなくてはなりません。そのため、「アジア文化造形学会」でいう「アジア」は、日本を含む極東、東南アジア、南アジアと思っていただければと思います。

―ありがとうございます。アジアだけでもかなり広範にわたられる学問なのだと拝察します。学会創立の目的にある「こころ」はそこに住む人の精神を指していると思われます。では、「かたち」とはどのようなものを指しますでしょうか。

山本氏:「かたち」という言葉ですが、単に有形であることを意味しているわけではありません。会則によると、「かたち」は「眼、耳、鼻、舌、身、意の6種の認識器官の対象となる色、声、香、味、触、法の6種の認識領域」と定義しています。例えば、絵、道具、布や陶器など、形のあるもの及び形はなくとも、音楽、匂いや味など、五感で感じられるもの全てが「かたち」に当てはまります。当会では、精神である「こころ」とそれを取り巻く「かたち」の本質とは何かを追求し、人々の相互作用を図ります。

純粋な探求心の重要性と、外の世界へ還元する

―上記のような理念がある中で、どのような活動をされているのでしょうか。

水野氏:当学会は、独立行政法人日本学術振興会に登録されており、主な活動としては二つあります。一つは、年に一回の学会誌の発行と総会の開催があります。学会誌の中には、会員が執筆した論文や研究ノートを掲載しています。会員の方の活動として各自で展示会を行うこともあります。我々事務局では、各会員の方の活動をHPや会員向けメールマガジン等に載せることを通じて紹介しております。また「造形」という言葉にあるように、自分たちで実際にモノをつくることも重要な活動の一つです。「生涯教育」という言葉があります。生まれ落ちてから死ぬまで、一生教育ということです。当会には会員として幅広い年代の方に参加していただいておりますが、入会した者は皆平等であり、道楽であれ、学問であれ、自分の興味の対象について生涯を通して真摯な姿勢で研究できるかということを最重要視しています。

―ありがとうございます。昨今、産学連携というような言葉が一つのキーワードとして挙げられると思います。上記の他に、学会の外部との連携などについてはどうでしょうか。

山本氏:水野が環太平洋アジア交流協会の理事長を務めております。そこでは学術活動に限らず、研究者が産業界にも入り込んでいます。例えば、時事性をもった研究テーマをとり上げ、シンポジウムの開催、海外人材にアクセスできるようなネットワークを通じて、提携企業に対しアドバイスをしています。

原点回帰世代を超えて繋いでいく信念

―幅広い年代の会員様がいらっしゃるとのことですが、今後どの層に向けて拡大するのか、方針はございますか。

水野氏:特に若い方には積極的に学会活動に参加してほしいです。一般の方々にはあまり知られていないかもしれませんが、研究はもちろんのこと、学術大会の運営を含む学会の活動というのは非常に良い経験になります。また、自分と似たような研究分野の若者同士がコミュニティを形成できる貴重な機会です。それが引き継がれることによって、学問や文化の伝承が為されます。そうなると、学会として若い方たちに会費を払って入会してもらうので、どのような価値を提供できるのか考えなければなりません。そういったことを考えることも、学会を発展させるための一因となっています。

―最後に、今後のアジア文化造形学会の今後の展望についてお聞かせください。

山本氏:創立当初の精神を改めて再現したいと考えております。つまり、自分たちの研究について、純粋に追及するということです。我々は学会であるため、世俗的な欲求のために研究を行うのではありません。本来の目的である、「アジアの人々の暮らしに関わる“こころ”と“かたち”の本質を究め、アジア文化の国内外会員相互の交流を図る」という信念に立ち返り、学術界そして、広い社会へ還元できればと思います。そして、若者たちの出会いから生まれる新しい学術分野を作り上げていきます。それが世代を超えて、一つの目的に対して進んでいく。この過程を通じて日本の学術の発展に寄与します。


<学会概要>
名称:アジア文化造形学会
設立:1997年7月
HP:https://www.society-acf.com/
Youtube:なし
SNS:Instagram https://www.instagram.com/asia_culture_forms/
設立趣旨:アジアの人々の暮らしに関わる“こころ”と“かたち”の本質を究め、アジア文化の理解と国内外会員相互の交流を図る。