会社紹介

自然と人との共生を目指して。養蜂場から始める第一歩 株式会社つむぎ

株式会社つむぎが運営するつむぎ養蜂園にて、同社代表の阿久津氏

持続可能な森林の経営は⽇本のみならず世界的にも注⽬されており、国連の「SDGs ‒ 持続可能な開発⽬標」にも取り上げられている。しかし、森林保護などの環境問題をどこか他⼈事に感じている⽅も少なくないであろう。このような意識を改善する⽅法の⼀つとして、⽇常⽣活の中で環境問題を⾝近に感じる機会を創ることがあげられるのではないか。当インタビューでは、そのようなきっかけを「ハチミツ」という普段から親しみのあるモノで創り出す、株式会社つむぎ代表取締役社⻑の阿久津⽒にお話しを伺った。

⾃ら⼿繰り寄せた養蜂を学ぶ機会

つむぎ養蜂園にて、使用している養蜂箱

―まず、養蜂の会社を経営するに⾄った背景についてお伺いしたいのですが、阿久津さんはいつからこのようなことに興味を持たれたのでしょうか?

阿久津⽒:私は⽥舎の⾃然が⼤好きだということもあってか、植物やミツバチなどの⽣き物のことには幼いころから興味がありました。昔から「やってみたい、もっと知りたい」と感じたものや、「これってステキだな」と憧れたものに対して、思うだけではなく⾏動に移すような性格でした。またぼんやりと、私の⼤好きなこの⾃然を沢⼭の⼈に知ってもらう仕事につきたいと思い過ごしていました。そんな中、たまたま養蜂の勉強をするきっかけが巡ってきました。そこでそのチャンスに⾶び込み、師匠にご指導を頂きながら養蜂について学びを深めたところ、⾃然やミツバチ・養蜂の不思議と魅⼒により⼀層引き込まれました。そこから養蜂の会社を⽴ち上げる運びとなりました。

知られざる養蜂と⾃然の魅⼒

―夢や憧れを実際に形にするまでに蜂や養蜂に関して様々な事を学ばれたのですね。学んでいく中で、具体的には養蜂のどのようなところに引き込まれていったのでしょうか?

阿久津⽒:沢⼭ありますが、⼀番引き込まれたのは、ミツバチを通してその⼟地の⾃然の不思議や魅⼒を⾝近に感じることができる点かもしれません。ハチミツの味やミツバチの健康状態は、ミツバチの巣箱を置く周りの⾃然環境に⼤きく左右されます。花がたくさん咲き、花蜜や花粉が多く集められる環境では、ミツバチも元気ですし、ハチミツもたくさん採れます。セイヨウミツバチは、⼀種類の⼤量蜜源があった場合、集団でその蜜源に向かい花蜜を集める習性があります。「アカシア」「リンゴ」などの単花蜜と呼ばれるハチミツが採れるのはそのためです。また、様々な種類の花から集めた花蜜からできたハチミツは百花蜜と呼ばれます。セイヨウミツバチからは単花蜜・百花蜜のどちらも採れますが、ニホンミツバチは集団で⼀種類の蜜源に向かう性質はないので、百花蜜しか採れません。季節や地域によって、蜜源となる花やミツバチの種類が違えばハチミツの味も⾹りも全く異なるのでとても⾯⽩いです。

―その⼟地や季節によって出来上がるはちみつが変わるなんて、まるでワインみたいですね。今まで以上にミツバチや養蜂にとても興味がわいてきました。

阿久津⽒:ありがとうございます。普通に⽣活していると、なかなかミツバチや養蜂について知る機会って少ないですよね。先ほど申し上げたほかにも、ミツバチの種類によっていろいろな⾏動特性があったりして、とても⾯⽩いです。ニホンミツバチはすぐに逃げ出しやすい特徴がある⼀⽅、セイヨウミツバチは⼈為的に群れを合わせたり分割できます。そのため、セイヨウミツバチの⽅が扱いやすいです。あとはミツバチたちが働いている様⼦を私が実際に⾝近で観察している中で、新しく発⾒できることも沢⼭あます。養蜂場ではミツバチを箱の中で飼っているのですが、⼀箱に数千から数万匹の蜂たちがいます。巣枠の中には、花粉をためている場所や、ミツバチのオスや働きバチが孵化する場所、⼥王バチが育つ「王台」といわれる箇所など、複雑な構造となっています。

―そんなに沢⼭のミツバチを飼っていると、ハチミツを採取する際などに⼤変なことも多いのではないでしょうか?

阿久津⽒:そうですね。ミツバチに刺されてしまう、真夏の作業は熱中症になりかけるなど、危険なことも多々あります。また、⾯布に体当たりするなどミツバチの⾏動が激しいときもあります。そのような場合は、巣箱に煙をかけておとなしくさせてから作業します。さらにミツバチを飼う上では、ミツバチへギイタダニという寄⽣⾍や、腐蛆病といった伝染病、スムシなどの害⾍の対策をしなくてはいけません。つむぎ養蜂園では、安⼼安全なハチミツやミツロウを作るため、乳酸菌のサプリメントを与えてミツバチを元気にしたり、オーガニック系のダニ剤を使っています。弱い群れは放置すると病気が発⽣する原因になるので、早めに⾒切りをつけて他の群れに合わせるなどという対策もしています。

⾃然を⾝近に感じる機会が少ないことへの危機感

つむぎ養蜂園にて、使用している養蜂箱

―ハチミツ作りがこんなにも⾃然と密接に関係していることを改めて確認できました。

阿久津⽒:⾝近なことで⾃然と関わり合いが深いものってハチミツ以外にも沢⼭あるのですが、意外とその関係性に気付く機会が少ないですよね。昨今「⾃然」に関して知ることができる機会といえば、主にメディアからの暗い情報などが多いと思います。環境問題に関して「このままだと⼤変なことになる」という不安感を煽るようなやり⽅だと、かえってそれらの問題から⽬を背けたくなりますよね。ですので、ミツバチの飼育を通したハチミツ作りなど、ワクワクするような⽅法で⾃然を⾝近に感じることができる機会が増えたらいいなと願っています。実際に養蜂をやっていると、環境問題と⾔われていることが⼈ごとではなく、全て⾃分ごとになるのです。そのため、つむぎ養蜂園では養蜂体験事業を主に進めていく予定です。

⾃然と⼈が共⽣する社会を⽬指して

―たしかに、森林整備不⾜などの問題は世界でも⼤々的にとりあげられていますが、⾝近な形で⾃然のことを考えられる機会って少ないかもしれませんね。

阿久津⽒:はい、そう思います。そのため、養蜂の他にも、皆様が⾃然を楽しく⾝近に感じる機会がより増えるような活動をしていきたいと考えています。私は、⽇本の⽊でハープを作り奏でる「森のハープ弾き」という活動も⾏っております。今後はその活動と絡めながら国産材で作ったハープの販売や、そのほかにも国産材のスプーンやアクセサリーといった普段使いができる物の販売も⾏っていきたいと考えています。今後さらに何か良いご縁に巡り合った際には、そちらにも積極的に取り組んでいきたいです。

―最後に、株式会社つむぎ様の⽬指す世界観についてお聞かせください。

阿久津⽒:養蜂や国産の⽊材を使った商品を通して「⾃然と⼀緒に⽣きること」「⾃然の恵みを活⽤して何かに取り組む楽しさ」を周りに伝えていくことで、「⾃然と関わることってなんだか楽しそう、やってみようかな」と思う⼈の輪を広げていきたいです。そうすることで、森や⾃然環境、その先にある環境問題などにも興味をもって頂ける⽅を増やせたらと考えております。そして、⾃然と⼈とが互いに尊重し助け合い共⽣できるような関係性・社会を創っていきたいです。